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【17.07.29】議会基本条例制定にむけて
7月12日から14日、先進地視察報告
<下関市>平成17年2月、1市4町の対等合併により、30万人に中核市になった。27年度人口268,617人、議員定数34人、面積715.89㎢、市役所が市の東端に位置し、4つの支所を有している。
条例制定のきっかけは、19年の改選後104人の議員報酬等について見直し提案があり、協議を続ける中で、21年3月「議会改革に関する調査特別委員会」を設置し、議会基本条例の制定へと進んでいった。23年3月「議会基本条例立案に関する調査特別委員会」を設置し、各会派から選出の8人で調査・学習・先進地視察を経て素案を作成し、全員協議会での意見集約後修正をして、パブリックコメントを実施し、市内8か所で市民説明会を実施し、素案修正を行い条例案が完成された。
わかりやすく、市民に開かれた議会を実現するために、議会基本条例を制定した。「議会基本条例とは、市民に開かれた議会、市民参加を推進する議会を目指し、自らの総意工夫により政策立案及び政策提言を行い、更なる議会改革を継続し、市長と健全な緊張関係を保持しながら、真の地方自治の実現に邁進するために、市政の情報公開と市民参加を原則とした下関市議会及び下関市議会議員の活動原則等の議会に関する基本的事項を定めることにより、市民福祉の向上と公正で民主的な市政の発展に寄与することを目的とする下関市議会における最高規範の条例です」 下関市市民向けのパンフより
条例の内容は、第1章から9章までとなっており、第1章では目的を、2章では議会及び議員の活動原則及び会派について、3章では市民と議会の関係、4章では市長と議会の関係、5章では委員会の活動と議員間の討議、6章では政務活動費、7章では議会及び議会事務局の体制強化、8章では議員の政治倫理、議員定数及び議員報酬について、9章では最高規範性と見直し手続きを定めている。特徴的なものは、「反問権」という言葉がわかりづらいため、執行部から議員に論点整理のため「質問内容の確認をすることができる」という言葉を用いている。また、会期閉会中にかかわらず、「文書質問を行うことができる」とし、議会報告会は「市民と議会のつどい」としている。基本条例と併せて、「議員政治倫理条例及び同条例施行規程」「委員会傍聴規定」「議会広報部会運営要綱」を定めている。
基本条例制定後、常任委員会、議会運営委員会、特別委員会まで全てインターネットによるライブ、録画中継の配信を始め、議員個人の各議案の賛否においても全てHP公開を行っている。議場も、キッズルーム、難聴者支援設備、車いすスペース2台分を設置、傍聴者用ディスプレイも設置し、表決ボタンを導入している。
下関市は、合併により広大で、それぞれの地域の特性に違いが大きい。2元代表制として議会としての役割を果たすためにも、基本条例が必要だったと思われる。基本条例制定に全議員と市民の理解を得るため、時間をかけ検討をしている。そして、議員だけでなく、議会事務局がしっかりしており、市長、執行部と対等に議論するためにも、議会事務局の重要性を感じた。基本条例制定後、議会改革が進んでいるが、「市民とのつどい」等、まだまだ、進まないものもあると言う。議会改革に終わりはないと実感した。
<古賀市>市制施行1997年10月1日、面積42.07㎢、人口58,517人、議員定数19人
「開かれた信頼される議会をめざして」議会改革を進め、早稲田大学マニフェスト研究所の議会改革度調査2014で、全国32位、九州では1位と評価されている。視察当日は、議会運営委員会のメンバーと副議長が対応してくださった。
市制施行を契機に議会改革の模索が始まり、3年後の2010年には活性化特別委員会や議会運営委員会で検討を始めている。翌年2011年5月、新体制発足時、議長による「議会基本条例」を掲げた所信表明を受けて、議会基本条例制定に取り組み、条例の検討に2年間、施行準備に8ヶ月間かけている。
インタ―ネット中継、議場モニターや委員会カメラ設置は、基本条例制定以前の2012年に実現している。2013年には、政務活動費交付条例の全部を改正し、使途範囲を拡大せず、議長による透明性確保義務を明記し、2015年には収支報告をネット公開している。この年、6月には、補正予算、決算特別、議員全員の特別委員会も中継・録画配信を実施。一般質問では、書画カメラを活用し、モニターにグラフ表示、iPadからのデータ映像も可能にしている。
議会基本条例制定をめぐる論点では、「条例があってもなくてもよいのか、必要不可欠な条例か、市民への約束か」から始まり、「議会の役割」「議員研修」「自由討議」「会議の原則公開」「議会報告会」「一問一答」「反問権」「政策推進会議」「条例案の委員会提案か議員提案か」について深められている。地方自治法では、政策提言など定められておらず、議員の仕事を条例化して、予算の根拠にもなっている。
古賀市議会基本条例の特徴として,「議会基本条例施行準備会」を設置し、8か月かけて、会議規則、議会報告会実施要項、政策推進会議運営要綱、議会全員協議会規定等の会議規則改正を全会一致で決めている。よって、議会報告会前には、全員で内容のプレゼンテーションを行い、よりわかりやすい報告会を目指してしいる。また、自由討議を尊重し、質疑終了後、議長が必要と認めた時、動議があった時は、会議に諮って自由討議を行うことができる。事例として、国民健康保険税の引き上げに対し、自由討議の動議が出され、委員会に付託され、「付帯決議」を決議し、国保改定に伴う市長への要望を提出している。議会終了後、市長は「声明」を発表し、議会は「決議」可決後の執行状況を確認している。さらに閉会中所管委員会で議論され、国に対する「緊急要望」を市長名で提出に至っている。そして、基本条例の13条に基づき、「政策推進会議」を設置し、議長を除く全議員が参加し、会派や議員から取り扱うテーマについてのプレゼンテーションを行い、複数提案された中から「公共交通の充実」が選定され、優先的に調査研究し、政策提言を行っていくことが決められている。
議員一人ひとりの発議を尊重しつつ、議員個人ではなく議会として、二元代表制の役割を果たす議会の在り方がとても参考になった。この事は容易ではないが、市民が最も望んでいる事柄である。名張市議会での自由討議と政策提言について考えていく。
<大分市>人口478,491人、議員定数44人、市制施行明治44年、H17年1市2町合併により新大分市発足
平成18年11月、議長から会派を超えて政策研究に取り組み、政策的条例の策定や政策提言を行うための検討組織を設置することについての提言から始まり、全議員による大分市議会議員政策研究会が設置された。19年10月、第1回検討会を開催し、政策課題の募集することを決定している。19年12月に第2回全体会議を開き、14件の応募題の中から議会基本条例を最初の政策課題とすることを決定し、議員10名による推進チームを設置し、20年12月、議会基本条例が全議員の賛成を得て成立している。
「議員政策研究会」の政策条例づくりフローは、はじめに全体会議でテーマを募集し、役員会議、議会運営委員会でテーマを決定し、推進チームを設置し内容の検討・調査研究執行部から法制、予算、意見徴収を行う。途中で全体会議と役員会議に中間報告の実施や、市民・学識経験者の意見を聞く。必要に応じてパブリックコメントの実施。再び役員会議で最終調整を行い、全体会義に報告。議会運営委員会の決定を経て、本会議に上程、提案理由説明、質疑、採決。議員全員で政策課題を決め、途中にも意見徴収の場を持ち、最終案時点でまた全員に報告するしくみである。その経過に役員会と議会運営委員会も入り、2重3重に全員の意見を反映するしくみをとっている。27年9月には「心と命を守る条例」を制定している。
議会基本条例第18条議会広報の充実に基づき、「市民意見交換会」が開催されている。意見交換会の広報については、市報、議会だよりに掲載、ポスターの製作と公共施設に張出、議会HPに掲載、街頭ビラ配り(ポケットティッシュ付)、ケーブルTV、民法番組(無料)、新聞無料広告、モニター広告など、あらゆる手段を用いて宣伝を行っている。参加人数は横ばいだが、アンケートをとって、次回の参加の希望を問うと、「機会があれば参加したい」の回答が多くなっている。この「意見交換会」で市民から出された意見や質問への対応を次回の意見交換会の資料に掲示し、HPにも掲載している。意見や質問を聞くばかりではなく、対応や回答を文章で市民に返すことは、とても参考になった。
若年層との意見交換会も別途開催されている。市内高等学校、大学、専門学校に議会が出向いている。テーマは「フリーな意見交換と併せ、18歳選挙権について」グループ方式で、4から7グループを作り、議員がそのテーブルをまわる形式をとっている。意見交換終了後、学生から各グループで出された意見・質問等の発表を行う。その後のアンケートでは、「政治に対する意識が変わった」が68%と過半数を超えている。どのように変わったかは、アンケートには表されていないが、政治や議会を知るきっかけになったと思われる。この若年層との意見交換会を企画提案したのも、若手議員でその意見を先輩議員が組み上げたそうだ。
今回の先進地3市を視察して、共通したのは、全議員による討議と議員間の自由討議のしくみをつくっていることだ。議会は合議体を基本に、できるだけ多くの意見を吸い上げることが、より多くの市民の声を市政に反映することに繋がるだろう。
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