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【11.07.16】6月議会報告
「子ども・子育て新システム」に対する請願の討論
「子ども・子育て新システム」に基づく保育制度改革に反対する意見書提出を求める請願について賛成の立場で討論します
政府が2013年度からの導入を目指し進めている、新たな保育制度案「子ども・子育て新システム」は、社会全体で子ども・子育てを支援と掲げられていますが、その内容は、これまでの児童福祉法に基づく市町村の保育実施義務をなくし、市場化するものです。
具体的には現行の保育制度では、市町村は保育サービスそのものを現物給付する義務がありますが、新制度では保育の必要性として、フルタイムで働く親は「一日保育や長時間保育」、パートタイムで働く親なら「短時間保育」と認定し、現金給付となります。認定をうけた保護者は、自分で保育所を探し直接契約となり、預ける時間に応じて施設に利用料をおさめる応益負担となります。
このことにより、これまでの保育は1日の生活を通して、子どもの成長を保障するものですが、週に3日だけ、午後だけという子どももいて、保育園の運営や行事にも支障が生じ、保育ではなく託児所化が懸念されます。保育所設置の責任が自治体になくなることで、認定をうけても入れる保育所がなければ預けられません。保護者と施設の直接契約制度により、自治体を通さないため、待機児童の把握さえ難しくなるでしょう。入所を決定するのは各施設となり、手のかかる子ども、障害のある子ども、利用料の徴収が難しい子どもの育ち・保育は守れるのでしょうか。
経営面においても、国の運営費の保障がなくなり、施設の収入は子どもの数と利用時間に応じたものとなり、収入の不安定さで、保育士の非正規化がさらに進み、ひいては保育の質の低下につながるのではないでしょうか。
公的支援は認定と現金給付で、後は自分で預ける施設を探し、直接契約・応益負担、そして施設の公的保障がなくなるということで、保護者への負担が今以上にかかってくるのではないでしょうか。これでは、社会全体での子育て支援とはいえません。また、このシステムの看板であった「幼保一体化」の中身は決められず、幼稚園・保育所・混合型施設を総称して「こども園」にするということだけです。
保育の公的責任をなくすと同時に、企業や株式会社の参入をすすめ、保育で得た利益を株の配当や他の事業にまわせるようにすることも検討されています。市場原理の導入と応益負担で、認定時間外の利用は全額自己負担、入学金の徴収や英会話などの特別料金、少人数クラスなどの質の高い保育への上乗せが上限なしで認められ、親の経済力が子どもの育ちに大きく影響します。
すでに、国会では地域主権一括法案が可決され、児童福祉施設最低基準が廃止となりました。国の基準がないということは、財源の根拠もなく一括交付金化が見込まれます。各自治体で、保育の財源確保が求められますが、苦しい財政の中でどれだけの予算がつけられるのか?
新システムは「税と社会保障の一体改革」の中の一部で、保育制度の解体について十分な認識と詳細の決定がないまま制度化されようとしています。これまで、同じような理念としくみで、障害者自立支援法と介護保険制度が実施されました。そして現状は、必要な支援や介護をお金がなければ受けられない状況で、障害者の自立支援と介護が十分にうけられるものにはなっていません。
この間、保育園で園長先生と運営している法人の皆さんと懇談をさせてもらい、新システムが保育の現場へどのように影響するかお話しを伺い、公的責任の必要性をあらためて認識しました。全国でも保育関係者、県下4つの保育団体が新システムの基本制度案要綱に反対を表明しています。
貧困と格差が広がる中、大変悲しい虐待も後をたちません。今こそ、子どもを守るために、児童福祉法に基づく保育制度の堅持と拡充を求め、このまま新システムに基づく保育制度改革を行わないように国へ意見書をあげることが必要です。
残念ながら不採択
「子ども・子育て新システム」に反対の意見書を国へあげる請願は、名張市では残念ながら(賛成は日本共産党・橋本マサ子、三原じゅん子のみ)不採択となりましたが、松坂市や大台町では採択されています。引き続き保護者・保育団体のみなさんと、安心できる保育を守るためにがんばります。
写真は昭和保育所の手作りおやつです。懇談の時にごちそうになりました。手作りの給食とおやつは、優しさを感じ心があたたかくなります。
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