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【11.06.02】3月議会報告 最終日の討論

平成23年度名張市一般会計予算について

大企業の利益が回復する一方で、国民の暮らしは以前、厳しさを増しています。
労働者の賃金は下がり続け、大学卒業者の就職内定率も最悪の事態で、暮らしの不安が世代を問わず大きく広がっています。
そして、東日本を襲った大震災により被災者の不安や悲しみは、私たちの想像を超えるものではないでしょうか?救援と復興に力を尽くさなければなりません。
このような中、中断していた国会が22日から再開されました。
今こそ国民の苦難により寄った政策が求められます。

政府の予算編成は、「新成長戦略」を本格実施するものとしています。
その主な内容として、財界の要求に応えて、2011年度税制改正で国と地方をあわせた法人実行税率の5%の引き下げ、大資産家優遇の証券優遇税制の2年間延長があります。
12年ぶりとなる法人税の実行税率5%の引き下げにより、国税、地方税あわせて約3兆円の大穴があくことになります。この大穴をうめるために、給与所得控除、退職所得課税、成年扶養控除、相続税など個人のへの増税に踏み切ろうとしています。

大企業の儲けが家計に波及しない構造は、先進国の中でも日本は顕著であります。
1997年から2007年の10年間でみると、日本は主要7カ国の中で、国内総生産がのびていません。この10年間に、大企業の経営利益は15兆円から32兆円に増えています。一方労働者の雇用者報酬は279兆円から253兆円(26兆円減)まで大幅に減り、大企業の内部留保が142兆円から229兆円(87兆円増)に急増しています。正規労働者の非正規化、賃下げとリストラ、そして中小企業に容赦のない買い叩きが行われ、大企業は巨額の利益を手にしました。
そしてリーマンショック以降の日本の経済危機は世界の中でも深刻で、失業・賃下げ・倒産が後をたちません。リーマンショックによって引き起こされた景気後退の最悪期を脱し、企業の営業余剰が増えるとアメリカ、イギリス、フランスなどでは、ただちに雇用者報酬も増えています。ところが、日本は雇用者報酬には全く波及がなく、景気拡張局面を迎えても、賃金には反映されず、企業の内部留保として蓄積されています。民間企業の給与総額は、ピーク時の97年からの12年間で総額30兆円、年収で61万円も減少し、大企業の内部留保はリーマンショック後の1年間で、11兆円も増加しています。
厚生労働省の2010年版「労働経済白書」でも「平均賃金の低下や格差の拡大により、所得、消費の成長力が失われ内需停滞の一因となった」と分析しています。民間のシンクタンクからも「需要ギャップの拡大がデフレの主因となっているが、さらに掘り下げてみていくと、需要ギャップの拡大の背景で、賃金下落が需要減退に拍車をかける構造がみられる。賃金と物価が相互に影響しあいながら下落する、賃下げの悪循環が生じている」と指摘しています。
過剰なお金が企業内部に眠っているために、経済の正常な循環が断ち切られています。雇用を増やし、非正規から正規雇用への転換、賃金の引き上げなど、富の分配するしくみを確立し、生活の安定と家計を温め内需の拡大をはかることが求められます。
政府のかかげた「新成長戦略」では富の分配のしくみのないまま、儲かっているところを減税し、収入の減っているところに増税では、住民の暮らしをより一層苦しめるものになるのではないでしょうか?

名張市の23年度当初予算は、公から民への構造改革路線で、これまでの行財政改革をひたすら走り続けています。保育所の民営化、学校給食の民間委託、ふれあいの有料化、子どもや高齢者への予算が削られてきました。敬老会補助やスクールガード、子ども達の廃品回収補助も廃止となり、地域や保護者と子ども達で取り組めていたものが実質なくなってきています。人と人とのつながりや地域での支えあいが言われますが、人として社会から大事にされていると感じることで、安心と信頼がうまれるのではないでしょうか?地域主権、住民自治として地域で考えてとのことですが、予算があってのことで、まちづくり一括交付金の減額により住民自ら事業の選択をせまられています。

また、市政一新プログラム改革項目推進報告では、行財政運営の効率化で「小中学校の規模・配置の適正化基本計画」を策定し、長瀬小学校を比奈地小学校へ統廃合したとしています。小中学校の規模・配置適正化は児童・生徒の最も適した教育環境の整備が目的と、この間、教育委員会から説明を受けてきたにもかかわらず、行革の成果とされており、適正化基本計画の当該校になりうるであろう小規模校では混乱が生じています。
家庭ごみの有料化は、財政の健全化のために有料化を実施したと記されています。これも生活環境部からは、行革ではなくごみの減量化のためと説明がされてきたもので矛盾があります。

財政再建と住民自治の熟成は否定するものではありません。重要なことであり、必要なことです。名張市の財政危機は1990年以降の7大事業と、右肩上がりの経済状況の終焉、そして、国の三身一体の改革など様々な背景があります。
これらのものを一挙に清算し、平成25年度までにどうしても単年度収支の黒字化をするべくして、市民生活の安心や安全がおびやかされてはなりません。足腰の強い自治体とは、お金のかからない行政ではなく、住民の暮らしの基盤をしっかりと整え、その上で地域住民の特色ある取り組みが生きていくものではないでしょうか?
以上をもちまして、当初予算に対して、反対の討論といたします。


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