<< 活動日誌の目次に戻る印刷用画面 >>

【10.05.19】「名張市が財政健全化団体にならないための緊急提案」について

名張市政の推移と財政危機

 名張市は1954年に市政が施行され、当初の人口は31,012人でした。1956年には、地方財政再促進特別措置法の摘用を受けています。当事の初代市長は宅地開発による人口増加政策を進めました。大阪へは60km、名古屋へは100kmという近畿、中部両圏の中央にある土地柄で、ベットタウンとして2001年には人口が85000人に達しました。
 1990年3代目の市長時代に、7大事業として、市立病院建設、西土地区画整理事業、名張駅再開発事業、既成市街地の再整備事業、公共下水道、斎場建設、大学誘致が打ち出されました。市民の第1位の要望であった市立病院が建設されたことは良かったのですが、斎場の土地問題や、大学誘致に34億円もの補助金をつぎこんだことが、市財政を圧迫するものとなりました。土地区画整理事業や駅前開発も順調に進んでいません。
 2002年現市長になってからは、増え続けていた人口は減少しはじめ、少子高齢化・生産年齢人口の減少で、今までのような税収の確保は困難になり、かつて10万人都市をめざしてつくられた総合計画も、変更を余儀なくされました。また、国の「三位一体の改革」は、地方交付税や補助金を減少させ、市財政に大きく影響しました。そして、合併については住民投票が行われ、市民は合併しない単独行政を選択しました。
 人口の減少や、団塊の世代の退職により市税収入の減少、扶助費の増加、土地価格の下落に伴う固定資産税収入の減少、三身一体改革による地方交付税減少、臨時財政対策債や補助金の減少などで財政調整基金も底をつき、厳しい財政状況の中、市長を本部長とする「市政一新本部」が設置され「財政非常事態宣言」を発し、「市政一新プログラム」が策定されました。
 市政一新プログラムは、財政の健全化、簡素・効率的な行政運営を目的とする行財政改革です。その内容は各種サービス施策・給付事業及び補助金の見直しで、敬老祝い金の廃止・老人福祉施設の有料化・精神障害者医療費助成の減額・遠距離通学補助金の減額・ゴミ袋の有料化など、教育や福祉サービスの後退となりました。そして、民間活力の導入と地域の自立の促進と市民活動の推進として、保育所の民営化・学校給食の民間委託・介護老人施設の民営化・地区公民館の地域運営と指定管理者制度が進められています。また、都市内分権として自治基本条例が制定され、地域づくり組織を条例化し区長制度を廃止して、地域予算制度が実施されました。第1次(2002年〜2006年)、第2次(2007年〜2009年)で効果額は72.1億円と市は発表しています。そして2010年〜2013年を完結編として、「財政早期健全化計画」と連動しさらなる行革を進めようとしています。この取り組みは、3年間で公立保育所の全園民営化による累積12億円の削減と、国が示した職員の適正化以上の人員削減が主なものとなっています。

保育所の全園民営化

 名張市の保育所は14園あり、全て公立で子どもも保護者も安心して通える保育所でした。市政一新プログラムでへき地保育所が1園、市内の幼稚園を運営する学校法人へ民間委託され、公立保育所を退職した所長さんが残りました。それから大規模園を5園、順次民営化する計画で、その条件は幼児教育の経験と実績のある市内の学校法人でした。そしてH20年に1園が移管されましたが、その後の民営化は引き受ける法人がなく、暗礁に乗り上げました。すると市は、これまでの移管の条件を取り払い、学校法人だけでなく社会福祉法人に広げ、保育や幼児教育の経験も問わず、市外の法人でも可能としたのです。財政早期健全化計画での全園民営化は、財政削減が目的であり、子どもの安心できる保育が後回しになっています。
 保育所の民営化に伴い保護者と地域に市から説明会が開かれ、「このままだと名張が夕張になる」「公立保育所は維持できない」「財政健全化団体になったら保育料の値上げにもなる」など、市民に財政難の不安をあおり「民営化されても保育は何も変わりません」という説明がされてきました。保護者からは「名張市はお金がないし、保育所も保育内容も変わらないのなら仕方ない」という声と「民営化とはどういうものなのか」という疑問の声がありました。私は、このまま保護者が良く分からないまま、全園民営化にしては安心できる保育が守れないのではないかと危機感がありました。そこで、労連に援助をお願いし、大阪保育運動連絡会の樋口恵子さんを講師に招き、保育所の民営化についての学習会を開催しました。そして学習会を機に保護者・保育士と共に考え、保護者を中心としたなばりの保育を考える、‘なばほネット’ができました。保育士も「全園民営化になるとこれから自分達の仕事はどうなるなか」「今まで自分たちで積み上げてきた保育水準は守れるのか」「民営化で本当に今までどおりの保育ができるのか」などの思いを職員組合でアンケートをとり、冊子にまとめてあらわしています。これは、今まで12園の公立保育所での保育士の雇用状態は、7割が非正規という異常な雇用状態で働きにくい環境の中でも、安心できる保育を守ってきていた保育士のみなさんが、あまりにも拙速で現場を考えていない保育行政に対して、初めて声を上げたものでした。

議会の論戦と市長選挙への影響

 市は全園民営化計画で、正規保育士〈市職員〉を名張市社会福祉協議会に移管する保育所に3年間派遣し一旦、市の仕事に戻し、また派遣を繰り返そうとしていました。私は2009年の9月議会で、このような雇用は問題であり、保育士の雇用が守れないことを指摘しました。すると子ども政策室部長は、保育士の雇用が守れないことと、土地に民地が入り混じっていて整理がつかず移管ができないことを理由に、計画の見直しを今年の5月に示すと答弁しました。それでも、行政改革推進室による保育所の全園民営化計画は変更されず、目標として掲げられています。財政の理由で全園民営化を推進するというのであれば、財政面で全園民営化しなくてもいいことを証明することが必要と考え、財政分析に取り組みました。
 3月議会の前に、目的基金の活用で早期健全化団体は回避でき、財源の工夫をすれば財政健全化団体に陥ることは避けられ、保育所の全園民営化する財政上の根拠がないことを、市長と企画財政部に緊急提案しました。同日、記者クラブに申し入れ発表を行いました。記者発表では記者から「全園民営化はしなくていいことは理解するが、職員の削減に関してはいいのではないか」「職員は高い給料で5時になったら帰れるし休みもとれる。休日出勤では手当てがつく。民間は大変で休みもとれないし、派遣労働者は路頭に迷っている。公務員はもっと削減をするべきだ」「市民には職員削減をのぞむ声が大きい。市民の立場の共産党がなぜだ」など質問されました。それに対して、「公務員も労働者であり、私たちは、労働者を守る立場で提案しています」「労働者は企業や会社経営の調整弁にされてはいけない。公務員も財政難だからとどんどん減らすと、最終的には市民へのサービス低下につながる」「民間の雇用条件が悪いからといって、公務員の雇用条件を下げると、労働条件は悪くなるばかりではないか」と、約1時間ほど議論となりました。翌日の新聞各紙に掲載されました。
 そして、3月議会で「早期健全化団体は5億円のやりくりで回避できるのに、なぜ14億円も余計に削減をしなければならないのか。財源不足を大幅に上回る健全化計画である」と市長に質問しました。「経済が不安定でぎりぎりのところでは、いつどうなるかわからない」との市長答弁でしたが、基金の活用の他にも水道会計に22億円の余剰金があり、一次的に借りることもできることを緊急提案でも明らかにしています。
 また、4月に行われた市長選挙では、行革を進める現市長に対して、新人候補が保育所の全園民営化凍結を政策のひとつにかかげて選挙戦がたたかわれ、3,500票差までつめよりましたが、市長は当選後にも「改革続行」を表明しています。

 今回は、3月議会での対応と4月の市長選挙、今年度4園の保育所民間移管の前に、初村先生の協力を得て分析と検討をし、議員団で緊急提案をしました。記者発表も行い新聞にも掲載され、一般質問でも訴えテレビ放映がされ、市民から市財政についての質問や学習会の要望があり、学習会を5月8日に開催しました。これから、このような財政分析の取り組みを市民と共にすすめ、財政難を理由に市民へ不安と痛みを押し付け、自己責任の名のもとに、自治体本来の役割である公的責任を後退させる構造改革路線を続ける市政に対して、住民のための市政を実現するために引き続き頑張ります。

<< 活動日誌の目次に戻る印刷用画面 >>

 ご意見、ご感想をお寄せください。

▲このページの先頭に戻る